2012年6月23日(土)、日本コーチ協会の第14回年次大会が、日本橋三井ホール(中央区日本橋室町)で開催されました。今年は「医療におけるコーチングの展望~日米の視点から」というテーマにもとづき、医療の分野でコーチングを取り入れながら目覚しい成果をあげている4名の方々にご講演いただきました。
ご参加いただきました皆様、また運営をサポートしてくださった皆様に、心よりお礼申し上げます。
以下に、当日の様子をご報告します。
基調講演 「行動変容の基本原理 ~コーチング手法の活用~」
ハーバード大学 准教授
Elizabeth Pegg Frates 氏
フレイツ氏は、医師による指導において、一方的な”アドバイス”ではなくコーチング的なアプローチの方が症状の改善が大きくなることを、多くのデータや論文を紹介ながら示されました。
フレイツ氏自身も、かつては患者に対して一方的に指導するやり方で、患者の生活習慣をなかなか変えられなかった経験があることを吐露した上で、自らもコーチ的なアプローチに変えていくことで、患者の行動変容を促していったという実体験を話されました。
また、コーチングの研究の課題として、コーチングトレーニングや効果測定の標準化、また、長期のフォローアップが必要であることを指摘されました。
◆Sesson1 「チーム医療にコーチングを活かす 患者中心の医療に向けて」
東北大学大学院医工学研究科 リハビリテーション医工学 教授
出江 紳一 氏
東北大学の出江教授から、「ケアマネージャーのための介護予防コーチング研修」、 「脊髄小脳変性症患者へのコーチング介入効果ーランダム化比較試験ー」、そして2年前から行われている「東北大学病院でのMCTPを取り入れたプロジェクト」、などを中心に、量的研究、質的研究といった側面から、医療におけるコーチングの有効性を発表していただきました。
◆Sesson2 「遅発型食物アレルギー陽性者に対するコーチング」
三番町ごきげんクリニック 院長
澤登 雅一 氏
澤登先生からは、コーチ資格を持つ看護師が遅発型食物アレルギー陽性者に対してコーチングを行うという臨床研究の成果を発表していただきました。
IgG抗体の低下に対して統計的有意は明らかにはならなかったものの、達成度について、コーチング介入群のが非介入群に比べて有意に高かったことから、原因食材を除去するという行動変容に対しては、コーチングが機能したことが示されました。
◆Sesson3 「医療分野におけるコーチングの研究設計について」
東海大学医学部血液・腫瘍内科学室 教授
安藤 潔 氏
すでにメディカルコーチングの時代が訪れていること。エビデンスとは何か?エビデンスにはレベルがあり、EBMの動きの中で、可能な限り高いエビデンスレベルの臨床研究が求められていること。そのための研究設計の考え方や手法、また、よいリサーチクエスチョンとは何か?等についての発表が行われました。