日本コーチ協会は、国際コーチング連盟(International Coaching Federation 以下ICF)が定める以下のコーチの倫理規定を尊重しています。
国際コーチング連盟の定める倫理規定 2020年改訂版
国際コーチング連盟(以下、ICF)の定める倫理規定は5つのパートから構成されています。
1.前書き
ICFの定める倫理規定は、ICFの核となる価値(ICFのコア・バリュー)、およびすべてのICFのコーチングのプロフェッショナルとしての振る舞いについて、倫理原則および倫理基準(定義を参照)について説明しています。
これらのICF倫理基準を満たすことはが、ICFの核となるコーチングのコンピテンシー(ICFコア・コンピテンシー)の第一歩です。
それは「倫理に基づいた行動を示しています。言い換えれば、コーチングの倫理と基準を理解し、常に適用している」ということです。
ICF倫理規定は以下のようにICFの品位と世界標準のコーチングの専門性を維持しています。
- ICFのコア・バリューと倫理原則に沿った行動基準の設定
- 倫理的考察、教育、および意思決定の指針の提示
- 「ICF倫理行動レビュー(ECR)」のプロセスを介してICFコーチとしての基準の判定と保持
- ICF認定プログラムにおけるICF倫理トレーニングのための基礎の提供
ICFの定める倫理規定は、自分自身をICFプロフェッショナルと表明している限り、コーチングに関連するあらゆる種類のやりとりにおいて適用されます。 これは、コーチングの関係(定義を参照)が確立されているかどうかに関わらず適用されるものとします。
この倫理規定は、コーチ、コーチスーパーバイザー、メンターコーチ、コーチングのトレーニング中のトレーナーや学習者として活動しているか、またはICFリーダーシップ(ICFの運営に携わっているボランティアコーチのリーダー)の役割を務めているICFプロフェッショナルに加えて、そのサポート要員(定義を参照)を含めた倫理的責任を明確にするものです。
「倫理行動レビュー(ECR)」のプロセスは、「ICFプロフェッショナルとしての倫理誓約」(後述)と同じくICFプロフェッショナルにのみ適用されますが、ICFのスタッフも、ICFの定める倫理規定を実証している倫理的な行動および「コア・バリューおよび倫理原則」(後述)を守ることを約束しています。
倫理的にあろうとすれば、予期せぬ問題への対応、ジレンマの解消や問題の解決を必要とする状況に、否応無しに遭遇することになります。
この倫理規定は、倫理規範を遵守しようとする者に対して、考慮すべき様々な倫理的要因に目を向け、倫理的に振る舞うための選択肢を見出せるよう支援することを目的としています。
倫理規定を受け入れるICFプロフェッショナルは、たとえ困難な決定を下したり、勇気を持って行動したりする場合においても、倫理的であるよう努めます。
2.主要な定義
「クライアント」—コーチングを受けている個人やチーム/グループ、スーパーバイジングまたはメンタリングされているコーチ、あるいはトレーニングを受けているコーチや学習者
「コーチング」—思考を刺激し続ける創造的なプロセスを通して、クライアントが自身の可能性を公私において最大化させるように、コーチとクライアントのパートナー関係を築くこと
「コーチングの関係性」—各当事者の責任と期待を定義する合意または契約に基づいて、ICFプロフェッショナルとクライアント/スポンサーによって確立される関係性
「規定」—ICFの定める倫理規定
「守秘義務」—公開の同意が得られない限り、コーチングに関わる中で取得した情報を保護すること
「利益相反」—ICFプロフェッショナルが金銭的、個人的、またはその他に関わらず、複数の人の利害に関与している状況であり、ある利益に貢献すると別の利益に反する、または対立する場合があること
「平等」—人種、民族、出身国、肌の色、性別、性的志向、性の自己認知、年齢、宗教、在留資格、精神的または肉体的障害、およびその他、人による違いに関わらず、すべての人々が包摂を実感し、リソースおよび機会に繋がる権利が含まれている状況
「ICFプロフェッショナル」—ICFメンバーまたはICF資格保有者と称する個人。その役割は、コーチ、コーチングのスーパーバイザー、メンターコーチ、コーチトレーナー、およびコーチングの学習者を含むが、これらに限定するものではない
「ICFスタッフ」— ICFに代わって専門的な管理および管理サービスを提供する管理会社と契約しているICFサポート要員
「社内コーチ」—組織に雇用されており、その組織の従業員をパートタイムまたはフルタイムでコーチする個人
「スポンサー」—提供されるコーチングサービスの料金を支払う、および/または設定または決定する存在(その代理者を含む)
「サポート要員」—ICFプロフェッショナルがクライアントをサポートするために働く人々
「体系的平等」—それぞれの「コミュニティ、組織、国家、社会」において、倫理観、核となる価値観、政策、体制、文化において慣例となっている性別、人種、その他についての平等
3. ICFのコア・バリューと倫理原則
ICF倫理規定は、ICFコア・バリュー(下記)およびそれに由来する行動に基づいています。すべてのバリューは等しく重要であり、支え合っています。これらのバリューはICFの理想として意欲的なものであり、求められる基準を理解し解釈する際に使われるべきものです。すべてのICFプロフェッショナルは、コミュニケーションの中でこれらのバリューを示し、広めることが期待されています。
コアヴァリュー
私たちは、信頼性、オープン性、受容性、一致性にコミットしており、ICFコミュニティのすべての部分が相互に責任を持ち、以下の価値を保持していると考えています。
- 品位:私たちはコーチングという専門職と私たちの組織に貢献すべく、最も高い水準を保持します。
- 卓越性:プロのコーチングの品質、資格、能力に関する卓越性の基準を設定し、実証します。
- 協働:協働的パートナー関係と共創の成果を通じて生じる社会的つながりとコミュニティの構築に価値を置いています。
- 尊重:私たちは包括的であり、世界中の関係者の多様性と豊かさを大切にします。基準、ポリシー、品質を妥協することなく、私たちは人々を第一に考えています。
4.倫理基準
次の倫理基準は、ICFプロフェッショナルの専門的活動に適用されます。
第1節 クライアントへの責任
ICFプロフェッショナルとして、私は、
- 初回または事前に、コーチングのクライアントとスポンサーに対し、コーチングとは何であり得られうる価値は何か、守秘義務とは何で何が制限されるか、金銭的な取り決めやコーチング契約のその他の条件について説明し、その理解を確実にします。
- サービスを開始する前に、クライアントとスポンサーを含むすべての関係者の役割、責任、権利に関する合意/契約を作成します。
- 合意されたとおりに、すべての関係者との間で最も厳しいレベルの守秘義務を維持します。 私は、個人データおよび通信に関連するすべてに適用される法律を認識し、それらに従うことに同意します。
- すべてのコーチングのやりとりの中で、関係するすべての関係者間で情報が交換される方法について、明確に理解を得ます。
- 情報が秘密にされない条件(例えば、違法行為、有効な裁判所命令または召喚状に基づいて求められた場合、または本人や他の人に危害が及ぶリスクが明らかにある、あるいはありそうな場合、等)について、クライアントとスポンサーまたは利害関係者の理解を確実にします。上記の状況のいずれかが当てはまると合理的に確信が得られた場合、適切な当局に通知せざるを得ないことがあります。
- 社内コーチとして活動する際は、コーチングの合意から継続的な対話を継続する中で、コーチングのクライアントおよびスポンサーとの利益相反または潜在的な利益相反を制御します。 これには、組織内での役割、責任、関係性、社内記録、社内機密、およびその他の報告義務への対応が含まれる必要があります。
- 業務上でのやりとりで作成された電子ファイルや通信などを含むいかなる記録も、守秘義務、セキュリティ、プライバシーの保護を促しつつ、適用される法律や契約を遵守する形で保持、保存、破棄します。さらに、コーチングサービス(テクノロジーを利用したコーチングサービス)で使用される新しいまたは発展途上の技術については適切に使用し、さまざまな倫理基準がどのように適用されるかを認識しています。
- コーチングの関係性が生み出している価値が変化する兆候に注意を払い続けます。その場合、関係を変更するか、クライアント/スポンサーに別のコーチを探す、別の専門家を探す、または別のリソースを使用するように勧めます。
- 合意書の条項に従い、コーチングのプロセスのどの時点において、どのような理由であっても、コーチングの関係を終了しようとするすべての当事者の権利を尊重します。
- 利益相反の状況を回避するために、同じクライアントやスポンサーと複数の契約と関係を同時に持つことについて、細心の注意を払います。
- 文化的、関係性的、心理的、文脈的な事柄から生じうる、クライアントとの力関係や立場の違いを認識し、能動的に調整に努めます。
- クライアントを第三者に紹介することで得られ得る報酬、および得られるその他の利益をクライアントに対して開示します。
- どのような関係性においても、合意された報酬の量や形態に関わらず、一貫したコーチングの品質を保証します。
- すべてのやりとりにおいて、ICF倫理規定を遵守します。自ら倫理規定違反の可能性に気付いた際、または別のICFプロフェッショナルの非倫理的な行動を認識した際は、関係者に配慮して問題を提起します。それで問題が解決しない場合は、解決のために正式な当局(ICF Globalなど)に照会します。
- すべてのサポート要員担当者に対し、ICF倫理規定の遵守を要求します。
- 常に最高品質を約束するために、個人的、専門的、および倫理的な開発を継続します。
- コーチングの遂行またはプロフェッショナルとしてのコーチングの関係性を毀損し、軋轢を生み、妨害する可能性のある個人的な制約や状況を認識します。採られるべき行動を決定するための援助を求め、必要に応じて、関連する専門家の指導を速やかに求めます。これには、コーチングの関係性の中断または終了が含まれる場合があります。
- 利益相反または潜在的な利益相反について、関係者と共に問題に向き合う、専門家の支援を求めるか、一時的に中断するか、あるいは専門的な関係を終了するなどにより解決します。
- ICFメンバーのプライバシーを維持し、ICFまたはICFメンバーによって許可されている場合にのみ、ICFメンバーの連絡先情報(電子メールアドレス、電話番号など)を使用します。
- 自身のコーチングの技能、コーチングの能力レベル、専門性知識、経験、トレーニング認定、ICF資格を正確に認識します。 21.ICFプロフェッショナルとして提供するもの、ICFから提供されるもの、コーチングという職業の専門性について、およびコーチングから得られうる価値について、正しく的確に口頭で伝え、文書を作成します。
- この規定によって定められた倫理的責任について通知されるべき人々に伝達し、認識させます。
- 物理的あるいはその他のやりとりに影響を与える境界線に留意し、明瞭で適切かつ文化的相違に配慮して設定する責任を持ちます。
- クライアントまたはスポンサーと性的または恋愛関係を持ちません。私は関係性に適した親密さのレベルを常に意識します。そのような問題については対処するか、もしくは契約関係を取りやめるために適切な措置を講じます。
- 現地の規則と文化的慣行を尊重しつつ、すべての活動と業務において公正と平等を維持することにより、差別を回避します。これには、年齢、人種、性別の表現、民族性、性的指向、宗教、出身国、障害または軍事的地位に基づく差別が含まれますが、これらだけに限定されるものではありません。
- 他者の貢献と知的財産を認識、尊重し、自らの知財の所有権のみを主張します。 この基準に違反すると、第三者による法的制裁を受ける可能性があることを理解しています。
- 研究を実施および報告する際には、誠実さを持ち、実証された科学的、該当する研究対象のガイドライン、自身の能力の範囲内で行います。
- 私自身とクライアントが社会に与える影響を認識しています。 私は「善を行い悪を避ける」という信条を守ります。
第2節 実践と遂行に対する責任
ICFプロフェッショナルとして、私は、
第3節 プロフェッショナルとしての責任
ICFプロフェッショナルとして、私は、
第4節 社会的責任
ICFプロフェッショナルとして、私は、
5. ICFプロフェッショナルとしての倫理誓約
ICFプロフェッショナルとして、ICF倫理規定の基準に従い、コーチングのクライアント、スポンサー、同業者、そして社会全体に対して、倫理的および法的義務を果たすことに同意します。
ICF倫理規定の一部にでも違反した場合、私の責任については、ICFの独自の裁量に委ねることに同意します。
さらに、違反に伴いICFに対して発生する私の責任には、ICFにおける会員資格や認定資格の剥奪などの制裁が含まれることに同意します。
「ICF倫理行動レビュー(ECR)」のプロセス(苦情を申し立てるためのリンクを含む)の詳細については、下記をクリックしてください。
Adopted by the ICF Global Board of Directors September 2019
2019年9月ICF理事会にて採択 日本語訳ICFジャパン