国際コーチング連盟が定めるコーチのコア・コンピテンシー

日本コーチ協会は、国際コーチング連盟(International Coaching Federation 以下ICF)が定める以下のコーチのコア・コンピテンシーを尊重しています。

A.Foundation  基盤を整える

1. Demonstrates Ethical Practice
 倫理に基づいた行動をしていることを示している

Definition: Understands and consistently applies coaching ethics and standards of coaching.
 定義:コーチングの倫理とコーチングとしてあるべき基準を理解し、常に適用している。

  1. Demonstrates personal integrity and honesty in interactions with clients, sponsors and relevant stakeholders
    コーチは、クライアント、スポンサー、および利害関係者とのやり取りにおいて、常に真摯で誠実に対応している。
  2. Is sensitive to clients’ identity, environment, experiences, values and beliefs
    コーチは、クライアントのアイデンティティ、環境、経験、価値観、信念に常に配慮している。
  3. Uses language appropriate and respectful to clients, sponsors and relevant stakeholders
    コーチは、クライアント、スポンサー、および利害関係者に対して、適切かつ敬意を表す言葉遣いをしている。
  4. Abides by the ICF Code of Ethics and upholds the Core Values
    コーチは、国際コーチング連盟が定める倫理規定を順守し、コア・バリュー(プロフェッショナリズム、コラボレーション、人間性、公平性)を支持している。
  5. Maintains confidentiality with client information per stakeholder agreements and pertinent laws
    コーチは、クライアントや利害関係者との間で合意したこと、および関連する法律に基づき、守秘義務を守り続けている。
  6. Maintains the distinctions between coaching, consulting, psychotherapy and other support professions
    コーチは、コンサルティング、心理療法、その他対人支援を主とする職業とコーチングを区別している。
  7. Refers clients to other support professionals, as appropriate
    コーチは、クライアントにコーチング以外の支援が必要なとき、その領域の専門家を紹介している。

2. Embodies a Coaching Mindset
 コーチングマインドを体現している

Definition: Develops and maintains a mindset that is open, curious, flexible and client- centered.
 定義:開放的で、好奇心を持ち、柔軟性があり、クライアントを中心に据えた、思考態度を開発し、維持している。

  1. Acknowledges that clients are responsible for their own choices
    コーチは、クライアントが自分の選択に責任をもつことを認識し、尊重している。
  2. Engages in ongoing learning and development as a coach
    コーチは、コーチとして継続的な学習と能力開発に取り組んでいる。
  3. Develops an ongoing reflective practice to enhance one’s coaching コーチは、コーチングの質を高めるために、継続的に自分のコーチングの振り返りを実践している。
  4. Remains aware of and open to the influence of context and culture on self and others
    コーチは、常に自分とクライアントの状況や文化的背景を意識しつつ、それにとらわれずにクライアントに接している。
  5. Uses awareness of self and one’s intuition to benefit clients
    コーチは、クライアントの利益のために、自身の気づきや直観を活用している。
  6. Develops and maintains the ability to regulate one’s emotions
    コーチは、自分の感情を整える能力を開発し、維持している。
  7. Mentally and emotionally prepares for sessions
    コーチは、セッションに備え、精神的および感情的な準備をしている。
  8. Seeks help from outside sources when necessary
    コーチは、必要に応じて外部のサポートを求めている。

B.Co-Creating the Relationship   関係性をともに築く

3.Establishes and Maintains Agreements
 合意の確立と維持

Definition: Partners with the client and relevant stakeholders to create clear agreements about the coaching relationship, process, plans and goals.
 定義:コーチングの関係、プロセス、計画および目標に関して明確に合意するために、クライアントおよび関連する利害関係者と協力している。
Establishes agreements for the overall coaching engagement as well as those for each coaching session
 コーチング全体についての合意だけでなく、各コーチングセッションについても合意を確立している。

  1. Explains what coaching is and is not and describes the process to the client and relevant stakeholders
    コーチは、クライアントとその利害関係者に対して、何がコーチングで、何がコーチングでないかについて明らかにし、そのプロセスについて説明している。
  2. Reaches agreement about what is and is not appropriate in the relationship, what is and is not being offered, and the responsibilities of the client and relevant stakeholders
    コーチは、コーチとクライアントとの関係性の中で、何が適切で何が適切でないか、何が提供され何が提供されないか、およびクライアントと関連する利害関係者の責任について合意に達している。
  3. Reaches agreement about the guidelines and specific parameters of the coaching relationship such as logistics, fees, scheduling, duration, termination, confidentiality and inclusion of others
    コーチは、コーチングを実施するうえでの詳細(具体的な進め方、費用、スケジュール、期間、終了条件、守秘義務、その他関わる人など)について合意に達している。
  4. Partners with the client and relevant stakeholders to establish an overall coaching plan and goals
    コーチは、クライアントおよび利害関係者と協力して、コーチング全体の計画と目標を設定している。
  5. Partners with the client to determine client-coach compatibility
    コーチは、クライアントと共に、パートナー関係を結ぶことに合意している
  6. Partners with the client to identify or reconfirm what they want to accomplish in the session
    コーチは、クライアントのパートナーとして共に、セッションで達成したいことを特定または再確認している。
  7. Partners with the client to define what the client believes they need to address or resolve to achieve what they want to accomplish in the session
    コーチは、クライアントのパートナーとして共に、セッションの中で達成したいことに向けて、クライアントが考える扱うべき、また解決すべきこととは何かを明確にしている。
  8. Partners with the client to define or reconfirm measures of success for what the client wants to accomplish in the coaching engagement or individual session
    コーチは、コーチング全体または個々のセッションにおいて、クライアントが達成したいことに対して何をもって成功とみなすかを、クライアントと共に特定または再確認している。
  9. Partners with the client to manage the time and focus of the session
    コーチは、クライアントのパートナーとして共に、セッションのタイムマネジメントをし、セッションの焦点を明確にしている。
  10. Continues coaching in the direction of the client’s desired outcome unless the client indicates otherwise
    コーチは、クライアントが別の方向性を示さない限り、クライアントが望む成果に向けてコーチングをしている。
  11. Partners with the client to end the coaching relationship in a way that honors the experience
    コーチは、クライアントのパートナーとして共に、これまでの体験を尊重し、コーチングの関係を終了している。
  12. 4.Cultivates Trust and Safety
     信頼と安全を育む

    Definition: Partners with the client to create a safe, supportive environment that allows the client to share freely.
     定義:クライアントとパートナー関係を築き、クライアントが自由に話せる安全で支援的な環境を創り出している。
    Maintains a relationship of mutual respect and trust.
     相互に尊重し信頼する関係を維持している。

    1. Seeks to understand the client within their context which may include their identity, environment, experiences, values and beliefs
      コーチは、クライアントのコンテクスト(たとえばアイデンティティ、とりまく環境、経験、価値観、信念等)の中で、クライアントへの理解を深めようとしている。
    2. Demonstrates respect for the client’s identity, perceptions, style and language and adapts one’s coaching to the client
      コーチは、クライアントのアイデンティティ、もののとらえ方、流儀、言葉遣いを尊重し、そのクライアントに対するコーチングに活かしている。
    3. Acknowledges and respects the client’s unique talents, insights and work in the coaching process
      コーチは、コーチングの過程で、クライアント独自の才能、洞察、取り組みを承認し、尊重している。
    4. Shows support, empathy and concern for the client
      コーチは、クライアントへのサポート、共感、関心を示している。
    5. Acknowledges and supports the client’s expression of feelings, perceptions, concerns, beliefs and suggestions
      コーチは、クライアントの感情、もののとらえ方、懸念、信念、提案を表現することを承認し、支援している。
    6. Demonstrates openness and transparency as a way to display vulnerability and build trust with the client
      コーチは、クライアントとの信頼を築くために、自分の弱さも見せるなどして自分自身を開示している。

    5.Maintains Presence
     今ここに在り続ける

    Definition: Is fully conscious and present with the client, employing a style that is open, flexible, grounded and confident.
    定義:開放的で柔軟性があり、安定していて自信に溢れる態度を以って、クライアントに対して最大限に意識を向け、今ここに共に在り続けている。

    1. Remains focused, observant, empathetic and responsive to the client
      コーチは、クライアントに対して、常に集中・観察・共感し、対応し続けている。
    2. Demonstrates curiosity during the coaching process
      コーチは、コーチングの過程において、好奇心をもってクライアントに接している。
    3. Manages one’s emotions to stay present with the client
      コーチは、クライアントと共に在り続けるために、自らの感情をマネジメントしている。
    4. Demonstrates confidence in working with strong client emotions during the coaching process
      コーチは、コーチングの過程において、クライアントの強い感情に自信をもって向き合っている。
    5. Is comfortable working in a space of not knowing
      コーチは、知らないことに対しても、快適に対応している。
    6. Creates or allows space for silence, pause or reflection
      コーチは、クライアントが沈黙したり、立ち止まったり、振り返ったりするための間を作り出している、あるいはそれを受け入れている。

    C.Communicating Effectively
    効果的なコミュニケーション

    6.Listens Actively
     積極的傾聴

    Definition: Focuses on what the client is and is not saying to fully understand what is being communicated in the context of the client systems and to support client self-expression.
    定義:クライアントの状況を理解して流れを読み取り、それまでのやりとりをすべて踏まえて、クライアントの自己表現を支援するために、クライアントが何を話し何を話していないかに焦点を当てている。

    1. Considers the client’s context, identity, environment, experiences, values and beliefs to enhance understanding of what the client is communicating
      コーチは、クライアントが何を伝えているかについての理解を深めるために、クライアントの状況、自己認識、とりまく環境、経験、価値観、信念を考慮している。
    2. Reflects or summarizes what the client communicated to ensure clarity and understanding
      コーチは、クライアントが伝えた内容を反復または要約することで、明確な理解に努めている。
    3. Recognizes and inquires when there is more to what the client is communicating
      コーチは、クライアントが伝えている以上のものがあることを認識し、問いかけている。
    4. Notices, acknowledges and explores the client’s emotions, energy shifts, non-verbal cues or other behaviors
      コーチは、クライアントの感情、エネルギーの変化、非言語的なサイン、またはその他の行動に気づき、受け入れ、探索している。
    5. Integrates the client’s words, tone of voice and body language to determine the full meaning of what is being communicated
      コーチは、クライアントの言葉、声のトーン、ボディーランゲージからの情報を統合し、伝えられていること全体の意味を把握している。
    6. Notices trends in the client’s behaviors and emotions across sessions to discern themes and patterns
      コーチは、一連のセッションを通じてクライアントの行動と感情の傾向に気づき、クライアントのテーマやパターンを認識している。

    7.Evokes Awareness
     気づきを引き起こす

    Definition: Facilitates client insight and learning by using tools and techniques such as powerful questioning, silence, metaphor or analogy.
    定義:効果的な質問、沈黙、比喩やアナロジー(類比)などのツールやテクニックを用いて、クライアントの洞察と学習を促進している。

    1. Considers client experience when deciding what might be most useful
      コーチは、何が最も有益であるかを決めるうえで、クライアントが何を体験するかを考慮している。
    2. Challenges the client as a way to evoke awareness or insight
      コーチは、気づきや洞察を引き起こすひとつの方法として、あえてクライアント(の思考、感情、行動)にチャレンジしている。
    3. Asks questions about the client, such as their way of thinking, values, needs, wants and beliefs
      コーチは、クライアントの考え方、価値観、ニーズ、欲求、信念について問いかけている。
    4. Asks questions that help the client explore beyond current thinking
      コーチは、クライアントが現在の思考を超えて探索できるような問いかけをしている。
    5. Invites the client to share more about their experience in the moment
      コーチは、クライアントが今この瞬間体験していることについて、より多く話せるようにいざなっている。
    6. Notices what is working to enhance client progress
      コーチは、クライアントの前進を促すうえで、今何が機能しているかに意識を向けている。
    7. Adjusts the coaching approach in response to the client’s needs
      コーチは、クライアントのニーズに応じてコーチングのアプローチを調整している。
    8. Helps the client identify factors that influence current and future patterns of behavior, thinking or emotion
      コーチは、クライアントの現在および未来の行動、思考、感情の傾向に影響する要因を、クライアント自身が特定できるよう支援している。
    9. Invites the client to generate ideas about how they can move forward and what they are willing or able to do
      コーチは、クライアントがどのように前進できるか、また、やりたいことや出来ることについて、自ら考え出せるよういざなっている。
    10. コーチは、クライアントがものの見方をとらえ直すことができるよう支援している。
    11. Shares observations, insights and feelings, without attachment, that have the potential to create new learning for the client
      コーチは、クライアントの新しい学びにつながるような観察、洞察、感じていることを伝えるが、それらに固執することはない。

    D.Cultivating Learning and Growth 学習と成長を育む

    8.Facilitates Client Growth
     クライアントの成長を促進する

    Definition: Partners with the client to transform learning and insight into action.
     定義:学びと洞察を行動に変容させるためにクライアントと協力している。
    Promotes client autonomy in the coaching process
     コーチングの過程の中で、クライアントの自律性を促進している。

    1. Works with the client to integrate new awareness, insight or learning into their worldview and behaviors
      コーチは、新たな気づき、洞察、学びをクライアントが自らのものの見方や行動に取り込めるよう、クライアントと協働している。
    2. Partners with the client to design goals, actions and accountability measures that integrate and expand new learning
      コーチは、クライアントが新たな学びを促すための目標や行動、アカウンタビリティの指標を、クライアントと共にデザインしている。
    3. Acknowledges and supports client autonomy in the design of goals, actions and methods of accountability
      コーチは、クライアントが目標、行動、アカウンタビリティを発揮する方法をデザインしていく中で、クライアントの自律性を尊重し、支援している。
    4. Supports the client in identifying potential results or learning from identified action steps
      コーチは、クライアント自身の行動から期待できる成果や学びを、クライアントが見極められるよう支援している。
    5. Invites the client to consider how to move forward, including resources, support and potential barriers
      コーチは、クライアントがリソース、支援、障壁となり得るものなどを加味したうえで、前進する方法を考えられるよういざなっている。
    6. Partners with the client to summarize learning and insight within or between sessions
      コーチは、クライアントがセッション中やセッション間で得た学びや洞察を、クライアントと共にまとめている。
    7. Celebrates the client’s progress and successes
      コーチは、クライアントの成長と成功を共に喜んでいる。
    8. Partners with the client to close the session
      コーチは、クライアントと合意してセッションを終了している。


    9. 出典: 国際コーチング連盟(ICF)コア・コンピテンシー更新版(2019 年10 月)
      原文: https://coachingfederation.org/app/uploads/2021/07/Updated-ICF-Core- Competencies_English_Brand-Updated.pdf
      翻訳: 株式会社コーチ・エィ(初版:2021 年10 月、改訂:2022 年8 月)