コーチングニュース Vol.221

コーチングを活かした「関わり」による組織の活性化

コーチングを活かした「関わり」による組織の活性化

「チームや組織を活性化するためにどうコーチングを活かせるか?」

コーチングを学びながら、そんな問いをみなさんもお持ちではないでしょうか?
コーチングは基本的に1対1で行うものですが、コーチングのスキルを活用してチームや組織の中で人と人の「関わり」を生み出すことで、組織を活性化させ、この正解がない時代においても新しい価値を探索し、創造していくことができます。

コーチングの本質は、未来を創り出す主体的な人材・組織を創ることにあると考えられます。「関わり」により組織が活性化し、未来を創り出すとは具体的にどのようなことなのでしょうか?

紀元前三世紀、春秋戦国時代に7つの国が戦いを繰り広げていた中国を舞台にした『キングダム』(原泰久 著)累計6800万部を突破している漫画作品ですが、多くの経営者が愛読し、『キングダム』を題材にしたビジネス書も何冊も出版され、多くの学びが『キングダム』には盛り込まれています。『キングダム』で心に残るシーンは数多くありますが、人と人の「関わり」により組織が活性化したシーンをご紹介したいと思います。

のちに中国を統一する秦が、5か国の合従軍に攻められ、国家滅亡の危機に、秦王えい政(後の始皇帝)は、王都を守る最後の砦に向かいます。しかし、強大な敵が攻めてくる中、最後の砦には負傷兵と女子供老人の民衆しかいません。秦王えい政は、自分たちの祖先がいかに苦労してこの国をつくりあげたか、そして子孫のために国を守れるのは自分たちしかいないことを訴え、降伏を考えていた民衆達に「兵士となって戦う」ように語りかけます。

そして勇敢な一人の少年が立ち上がります。

少年:「オイラは戦うっ」
秦王:「勇敢な少年よ、そなたの名は?」
少年:「甘人の子、甘秋」「お母と小さい妹を敵国の奴隷になんか絶対にさせない!」
秦王:「甘秋よ、共に戦えることを誇りに思うぞ。共に血を流すために俺は来たのだ」

このやりとりを聞いた他の民衆たちも自分も戦うと次々に立ち上がります。そしてその輪が広がり、ついには地響きをたてるほどの大きな声があがり士気が爆発します。こうして「戦士」となった民兵達は多くの犠牲を出しながらも国を守り抜き、未来を創るのです。

もちろん、秦王えい政が自らも死地にとびこみ、素晴らしい演説をして民衆たちの心に火をつけたのは間違いありません。 しかしもう一つの重要なポイントは最初に声をあげた少年に応じた秦王えい政の「関わり」です。

秦王えい政は少年の名前を聞くとともに少年の「存在意義」を問うたように思えます。そして甘秋は父の代わりに母と妹を守るという自己の意味を伝え、それを秦王えい政はアクノレッジし、そのやりとりを聞いていた民衆の心に火をつけました。この「関わり」は「双方向」であり、身分を超えて「対等」であり、ともに「未来を創り」、そして組織全体に「伝播」しました。

いくら優秀なリーダーがいても一人で組織をかえることは難しいと思います。いかにチーム内で人と人の「関わり」を生み出し、それを伝播させていくか、それこそがチームそして組織の力を最大化させる肝なのではないでしょうか?

みなさんはコーチングを活用してどのような「関わり」を生み出しているでしょうか?チームや組織を活性化するためにどうコーチングを活かせますか?

日本コーチ協会 会員
有吉 祐介